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8話 無自覚な優しさと新たな出会い

Penulis: みみっく
last update Tanggal publikasi: 2025-07-06 07:00:37

♢無自覚な優しさと新たな出会い

「アリアもすごいだろ。無詠唱だしさぁー」

 そう言う俺に、アリアは少し困ったように返した。その瞳には、穏やかな光が宿っていた。

「え? あぁ……うん? ユウくんも、同じのを使えるじゃない♪」

 詳しく聞きたかったけれど、俺も隠し事をしているのでアリアが深く聞いてこないし、俺も聞くのをやめておいた。俺も色々と聞かれたくなかったからだ。

「まあなあ〜。そろそろ……昼食の準備をするかぁ〜」

「そうだねっ」アリアはにこっと笑い、軽やかに頷いた。

 俺が倒した獣の肉の解体をしていると、二人でお金を出し合って買ってきた野菜を、アリアが手際よく下準備してくれた。アリアが調理してくれるので、俺は倒した獣の解体の続きをしていた。

 猛獣は種類によって売れる部位が異なるが、たいていは牙、爪、毛皮が基本だ。ほかにも薬の材料になる内臓もあるらしいが……俺はそこまで詳しくない。もったいないとは思いつつも、内臓はすべて転移魔法で処分し、地中に埋めておいた。

「次からは、この肉は売って野菜を買うお金と、自分たちが食べる分として取っておこうか?」

 ユウヤがそう提案すると、アリアは少し心配そうな表情を浮かべて、俺の顔をそっと覗き込んできた。

「……いいの? ユウくんが倒したんだし、それってユウくんのお小遣いになるはずじゃないの?」

 別に、俺が欲しい物っていっても、たいていのものはスキルでどうにかなるし、 お金を出してまで手に入れたいものは、正直あまり思いつかない。 せいぜい――食材とか、甘いデザートくらいだろうか。 でもそれだって、パーティ資金として肉を売った分で十分まかなえる。

 それに、魔石を売って得た報酬もかなりの額がある。 ……正直、お小遣いはもう充分すぎるほど持っている。

「お小遣いには困ってないし、俺は大丈夫かな。……アリアが倒した猛獣は、アリアのお小遣いでいいぞ?」

「えぇ〜、悪いよぉ……」

 アリアは薬草を片手に持ったまま、頬をふくらませてむくれたように言った。 けれどすぐに、ふわっと口元を緩めて、いたずらっぽくこちらを見上げてくる。その瞳は、いたずらっ子みたいにきらきらと輝いていて――何か楽しいことを思いついたときの子猫みたいだった。

「わたしのお金の使い道もさ……ふたりで決めて使お?」

 そう言うと、アリアはふいに視線を逸らして、指先で足元の草をくるくるといじり始めた。 どこか恥ずかしそうで、耳の先までほんのりと赤く染まっている。

 その仕草に、思わず胸の奥が跳ねる。 まるで告白でもされたような気がして――一瞬、心臓の音が大きく響いた。

「気にしなくても、遠慮しなくても……いいのに」

 そう返しながらも、アリアの「ふたりで決めて使お?」という一言が頭に残って離れなかった。

 その後、俺は解体作業を終え、魔法で肉と手をしっかりと洗浄しておく。 アリアのほうも調理を終えたらしく、嬉しそうに笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。 どうやら、“褒めて”と目が語っている。

「上手にできたな。ありがとな、アリア」

 そう言って、頑張ってくれたことへのお礼を込めて、彼女の頭を優しく撫でる。

「はぅ……えへへ……♪」

 アリアは目を細め、俺の手に嬉しそうに頬をすり寄せてくる。 その笑顔は、まるで陽だまりみたいにあたたかくて―― 思わず、もう少しこの時間が続けばいいのに、なんて思ってしまった。

 解体が終わった肉を収納して片付けた。

「何か、手伝うことはあるか〜?」

 ユウヤが尋ねると、アリアはにっこり笑った。

「大丈夫だよ〜。ありがとう♪ 休んでていいよぉー」アリアは両手を広げて、俺に休息を促す仕草をした。

 俺が無理に手伝っても邪魔なだけだし……な。俺は大人しく言われた通りに木陰に座り、木に寄りかかった。

 はぁ〜……平和だなぁ。どこまでも青く広がる空に、森の澄んだ空気が心地よくて癒やされる。太陽の光を浴びた木の葉が風に揺れ、きらきらと光って目までも優しく潤してくれる。

 ……もちろん、この場所は本来こんなふうにのんびりできるような場所じゃない。辺り一帯には、気配も音も匂いも遮る結界を張って、出入りすらできないようにしてある。俺はひそかに展開しているつもりなんだけど……アリア、絶対気づいてるよな。あの反応は。それとも、俺が警戒してるのを察して、安心して任せてくれてるのかもしれない。

 最初の頃は、周囲を警戒しながら簡単な肉を焼いて、パンとスープだけで済ませていた。でも今では――アリアはすっかり安心しきっていて、周囲を気にする様子もなくなった。食事のメニューも、まるで普通の家庭みたいな温かい料理になっている。まさか、この森の中で、こんな穏やかな時間が流れるとは思わなかったな……。

 さて……暇だし、俺だけ休憩してるのも気が引ける。よし、解体用のナイフをちょっと改造してみるか〜。

 えっと……まずは、収納してあるナイフと魔石を取り出す。そして、「統合と分離のスキル」と「具現化スキル」を同時に発動。ナイフと魔石を融合させて、元のナイフを少しおしゃれにカスタマイズしてみた。

 今回は――ただの装飾じゃない。アリアが好きだと言っていた“聖なるユンファの花”の模様を、柄の部分にワンポイントとして彫り込む。それはまるで、ふたりだけにしか分からない秘密の印のように、静かに輝きを放っていた。

 イメージ通りに具現化が完了し、手の中に現れたのは、見た目も機能も申し分ないナイフ。さりげない『二人だけが知る印の花の彫刻』が、美しい魔石と調和して、完全に世界に一つだけの贈り物にするつもりだ。

 ――おおぉっ! これは……見た目、めっちゃ成功じゃないか!? 刃の欠けも汚れも完全に消えていて、新品みたいにピカピカ。しかも、持ち手には魔石が美しく嵌め込まれていて、高級品にしか見えない。よし、まずは見た目だけなら大成功だな。

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